ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「興味を持つものがひとつとは限らないからな。その男だけでは足りなかったんじゃないか?」
「なっ」

 くっくと笑いながらそんなことを言い放った師匠を威嚇するようにメルヴィが睨む。

「もし今のお前が望むなら魔法が使えなくても連れてってやろう。どうする?」
「どうするって……」

 ちらりとメルヴィの方へ視線を向けると、少し不安そうに彼の紺の瞳が揺れていて。


“どう考えても師匠はメルヴィの反応で楽しんでるだけなんだけど”

 私が関わると途端に自信がなくなるらしい彼には、どうしたって私が必要なようだから。


「ここで彼と待ってます!」

 むぎゅ、とメルヴィの腕に抱き着くと、すぐに彼が破顔したのだった。



 ――かつてある魔法使いが友としてこの国の王の側にいた。
 その国の名前は『メルゲルベルク』。
 
 初代皇帝の戦友だった魔法使いのメルと、その初代皇帝の姓であるゲルベルクを合わせて名付けられていて。


 そんな時代から何代ものあとの今代、次期王の傍らに妻として一人の魔女が立つ日も、近いのかもしれない――……
 
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