ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
番外編

1.同棲でも同居でもなく、共存

「私の娘をお願いします」

 興味があることに抗えず、一か所に定住することは不可能とされる魔法使い。
 その性とも呼べる習性は流れる血の濃さで決まるという。


 『純血の魔法使い』
 
 そう呼ばれる俺は、突然訪問してきた親子をただ見つめていた。


 興味があることに抗えないということは、それすなわち興味がないことには何の感情も生まれないということで。


“魔女の親子か”

 ただ現状を確認すること以上の感想は出なかった。

 
「私はどうしても行かなくてはならないんです」

 特に返事をする気も起きず、ドアの前に佇む二人を無感情に視界に収める。

 訪問者が何者か気になったという理由で開けたドア。
 だから訪問者の正体を知った今興味を失いただただ退屈な時間である。


“あぁ、そういえばこの間気まぐれで栽培したキノコがそろそろ食べれるかもしれないな”

 ぱくぱくと動く母親らしき魔女の口元を眺めながらそんなことを考える。
 きっと何かしらの理由や願いを口にしているのだろうが、興味を失った今耳には届いているのだろうがまるで風のように俺の周りを通り抜けるだけで何を言っているのかは理解できなかった。


 その習性から一か所に留まることが不可能とさえれる魔法使いだが、この家に住んで十六年。
 ずっとこの家にいた。そしてきっと明日もこの家にいるだろう。
 
 この家で生まれ育った俺の両親は二人とも魔法使いだった。
 両親は俺とは違いずっとこの家にいたのではなく、ある時は母親が、またある時は父親がふらりとここへ寄り俺の面倒を見た。

 住んでいるというよりは拠点のひとつという認識が高いこの空間。
 ぶっちゃけこの放置具合でよく生きられたと思わなくもないが、案外俺は強かったらしく病という病ひとつせず十六の年を迎えた。

 
“そんな両親が最後にここへと立ち寄ったのは何年前だったか”

 残念ながら思い出せない。
 思い出せないほど昔だったのかもしれないし、単純に興味がなく忘れてしまっただけなのかもしれないが。
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