ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 足手まといだと言ったのは彼女へ発破をかけるためだったのだが、やはり魔女だからなのか俺からの評価に興味がないらしいリリアナにはいまいち効果が無さそうで。


 ついでだと理由付けて宿題を出す。
 
「不完全な発動になるのは、興味が逸れて願いがぶれるからだ。ひとつのことに集中すれば使いこなせる」

 思わずむくれるリリアナの額を軽くつつくと、まるで子供のようにむくれる彼女が大事だとそう思った。


「出来るまで帰ってくるの禁止だから」
「師匠も留守にするのに!?」
「この家は封鎖だ。これくらい切羽詰まらないとお前成長しねぇだろ」
「横暴!」
 
 青ざめるリリアナを無視し家に封鎖の魔法をかける。
 家に入れる条件は、彼女の意思で魔法を自由に発動すること。


 さっきこっそり彼女の持ち物に金を入れた袋を入れておいたので、流石に野宿なんてことにはならないだろう。
 無駄遣いしなければ俺が帰ってくるまで十分もつはずだ。

“その袋の存在にリリアナが気付けば、だが”

 いくら抜けているところがあるからって、そこまでではないはず。……ないよな?
 そんな不安が一瞬頭を過るが、彼女ももう二十歳。

 あまり過保護すぎるとよくないと判断した俺は彼女に背を向けた。


 「さて、旅の始まりか」

 鉱脈は広い。
 どこから研究するのかなど詳しく聞かなかったことを後悔しつつ、気が向くままに歩き出す。


 どうせ俺たちは同じものに惹かれるたちなのだ。
 最終目的が同じならきっと彼女に追いつける。

 根拠はないがそう確信していた。
 だって俺は魔法使いなのだ。

 興味があるものへの願いは深く、そして俺が望むのはレベッカだから。
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