ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 今度は私の方から彼の唇へと口付けを落とした。

 ちゅ、ちゅと口付けを重ね、たまに彼の唇で挟むように私の唇を食まれる。
 その甘い刺激は私の思考を奪うように痺れさせて。


「好きだよ、リリ」


 口付けの合間に溢すように呟かれたその言葉にドキリとした。

“好き?”

 ――違う。
 彼が好きなのは私ではなく、『薬草に興味を持った魔女』だったはずだ。

 そしてそれは、私じゃない。

「メルヴィが好きなのは、私じゃないわ」

 自分で口にしたくせにその言葉にショックを受ける。
 いつ解けるかわからない私の魔法でこの関係が成立しているのだと、そう何度も繰り返し自分へと言い聞かせていたはずなのに。
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