月のない夜に青く溺れて ~彼は本能以上の愛で彼女を包む~
 オメガなのにアルファに劣らず能力がある。アルファである彼女と並び立つにふさわしい。
 結局、アルファはオメガに引き寄せられる運命なのだ。
 アルファの華凛よりアルファらしいオメガの朔。
 オメガの朔よりもオメガらしいアルファの華凛。
 オメガだから。
 アルファだから。
 その言葉が頭をぐるぐるまわる。甘いしびれとともに、思考力がもはや用をなさない。
「あなたも結局」
 華凛ののどから掠れた声がもれた。
「結局、アルファがほしいだけなんでしょ」
「違う!」
「違わないわ。離して。私の婚約者は晟也だけだわ」
 もう破棄されたけれど。
 手をぎゅっと握りしめる。爪が喰い込み、痛みが走る。
「君は本当に彼を愛しているのか?」
 華凛は朔を睨み付ける。
「愛してるわ」
「君たちを見たとき、まるで保護者と子供だった」
「ひどい侮辱」
 声が震えた。
「依存を愛と間違えていないか。愛の名に逃げていないか」
「やめて」
 涙は止めようもなく溢れている。
「信じてくれ。本能以上に、君を愛している」
 言葉に酔いそうだ。
 華凛は歯を食いしばって耐えた。
 その首筋に、朔が唇を寄せる。
 甘美な震えが全身を走る。
 待っていた、と全身が喜び、早く、もっと、と震える。
「愛でごまかそうとしているのはあなただわ」
 その言葉に、彼は華凛を見つめる。
「それでもいい、君がほしい」
 猛り狂う何かを瞳に宿し、彼は言う。
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