月のない夜に青く溺れて ~彼は本能以上の愛で彼女を包む~
 もし本当に俺が噛みそうならまた殴ってくれ、とも言われた。
 1度は保護者と被保護者のような2人だな、と思った。
 だが、と朔は思い直す。
 華凛の揺れる心を察して、彼女が心変わりした自分を責める前に、彼女を手放した。
 そのうえ、2人が結ばれるように舞台を整えてくれた。
 彼は華凛を守り、愛し抜いたのだ。
 俺は君を尊敬する。
 朔は心の中で、そう呟いた。

 ん……と寝ぼけた声がした。
 華凛がぼんやりと目を開ける。
「起きたか?」
 優しく声をかけると、華凛は寝ぼけた顔で朔を見た。
 そして、ハッとしてうつむく。
 うつむいた先にある朔の裸に顔をあからめ、慌ててまた目をそらす。
「恥ずかしがる必要はないのに」
 からかうように、朔が言う。
「シャワー浴びる?」
 頬に口付けをしながら、朔がたずねる。
「浴びる」
「一緒に?」
「バカ」
 華凛はばっと布団を被った。
 はは、と朔は軽く笑った。
「おなかすいてない? ルームサービスをとろうか」
 朔がきくと、サンドイッチを、と頼んで華凛は逃げるように浴室に向かった。

 華凛が着替えて戻ると、もうサンドイッチは届いていた。
 ソファに隣同士で座って一緒につまみ、コーヒーを飲んで一息つく。
 朔の隣は心地いい。今はもう強い衝動もおさまり、落ち着いて自分の心を顧みることができる。
 晟也のことはちゃんと愛していた。
 彼を思うと胸が痛い。
 きっと、晟也は彼女の気持ちの変化を先に察した。
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