月のない夜に青く溺れて ~彼は本能以上の愛で彼女を包む~
 真剣な目が彼女をとらえる。
「結婚してほしい」
 朔が言った。
 言われたのは何度目だろう。
 華凛の目に、涙が浮かぶ。
「——断ってもいい?」
 華凛は思わず、そう口にする。
「どうして」
「だって、そうしたらまた言ってくれるでしょう?」
 いたずらっぽく、彼を見上げる。
 ふ、と彼は口の端で笑った。
「何度でも言ってやる。君の気がすむまで」
 朔は苦笑した。
「愛してる」
 朔がささやく。
 華凛は抱き着いた手に力をこめる。
「君は? 君の口から言ってもらってない」
「もちろん」
 それだけを答える。
「もちろん、何?」
「教えてほしい?」
「焦らすなあ」
 朔はまた苦笑した。
「それで?」
 待ちきれないように、朔は催促する。
「愛してる」
 小さな声で、彼の耳に囁く。
 朔はうれしそうに華凛にくちづけた。
 青銀の波は、とめどなく神秘の輝きを放っていた。

 1か月後、朔は結婚の挨拶に華凛の自宅を訪れた。
 リビングに通されて挨拶した朔は、次の瞬間には熱いコーヒーを浴びせられた。
「どこの馬の骨ともわからんやつに大事な娘をやれるか!」
 華凛の父は怒り狂い、罵った。
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