月のない夜に青く溺れて ~彼は本能以上の愛で彼女を包む~
「運命の番って言われた。怖い」
晟也の手をとる。
「そんな都市伝説。アルファを手に入れるための方便にすぎない」
オメガとアルファの間には、「運命の番」と呼ばれるペアが存在するという。その2人は出会った瞬間に、どうしようもなく惹かれ合うのだという。
運命の番ではなくても、番にはなれる。
オメガはアルファにうなじを噛まれると番になる。オメガは番となったアルファにだけフェロモンを出すようになるという。
「噛むだけで番になれるなら俺も君に噛みつきたい。噛まれるのでもいいけど」
「そういう冗談好きじゃない」
悪意がないのはわかっている。
だが、意図しない相手と番になってしまった悲劇もたびたび話題に上がる。
アルファは番を解除して新たな番を手に入れることができるが、オメガは新たな番を得られない。そのまま死を選ぶことが少なくないという。
その人たちを思うと、気軽に冗談にできない気がするのだ。
「今日は一段とナーバスだね」
彼は彼女の顎をあげ、唇を重ねた。
しばらくして、彼は違和感とともに唇を離す。
華凛はその様子に戸惑ったように彼を見る。
「どうかした?」
「いや、なんでもない」
彼は彼女の頭をまた撫でた。
彼は気付いてしまった。
キスが、いつもと違っていることに。
だが、認めることなんてできやしない、とも彼は思う。
彼女の心がすでに彼から離れ始めていることなんて。
翌日の華凛はイライラしながら仕事をしていた。
社長室があるビルの最上階は眺めが良いのだが、もはや見慣れた景色だ。いちいち心が和むこともない。
運命の番、と言われたことが気になっていた。
今までにも言われたことはある。が、彼らには彼女への愛などなく、ただアルファを手に入れたい欲望だけがその目に見えた。
彼女はそれらをすべてはねのけた。
晟也の手をとる。
「そんな都市伝説。アルファを手に入れるための方便にすぎない」
オメガとアルファの間には、「運命の番」と呼ばれるペアが存在するという。その2人は出会った瞬間に、どうしようもなく惹かれ合うのだという。
運命の番ではなくても、番にはなれる。
オメガはアルファにうなじを噛まれると番になる。オメガは番となったアルファにだけフェロモンを出すようになるという。
「噛むだけで番になれるなら俺も君に噛みつきたい。噛まれるのでもいいけど」
「そういう冗談好きじゃない」
悪意がないのはわかっている。
だが、意図しない相手と番になってしまった悲劇もたびたび話題に上がる。
アルファは番を解除して新たな番を手に入れることができるが、オメガは新たな番を得られない。そのまま死を選ぶことが少なくないという。
その人たちを思うと、気軽に冗談にできない気がするのだ。
「今日は一段とナーバスだね」
彼は彼女の顎をあげ、唇を重ねた。
しばらくして、彼は違和感とともに唇を離す。
華凛はその様子に戸惑ったように彼を見る。
「どうかした?」
「いや、なんでもない」
彼は彼女の頭をまた撫でた。
彼は気付いてしまった。
キスが、いつもと違っていることに。
だが、認めることなんてできやしない、とも彼は思う。
彼女の心がすでに彼から離れ始めていることなんて。
翌日の華凛はイライラしながら仕事をしていた。
社長室があるビルの最上階は眺めが良いのだが、もはや見慣れた景色だ。いちいち心が和むこともない。
運命の番、と言われたことが気になっていた。
今までにも言われたことはある。が、彼らには彼女への愛などなく、ただアルファを手に入れたい欲望だけがその目に見えた。
彼女はそれらをすべてはねのけた。