教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

27.第一隊

「エレノア様、いらっしゃいませ!」
「あ、エレノア様だ、こんにちは!」

 あれから、エレノアは休みの度に騎士団に顔を出しては甘い物を差し入れるようになった。特に、イザークの直属である第一部隊の騎士たちとはすっかり顔馴染みになってしまった。

(休みの日は部屋に閉じこもってダラダラしてたのになあ)

 果実飴を販売していた時は、休みを充実させたものの、特にすることもなく、ダラダラと身体を休めていた。それはそれで新鮮で嬉しかったが、やはりこうして外に出て、人の笑顔が見られるのは嬉しい。

(やりがい搾取だった教会とも違う。今は、私がやりたくてやってるんだもの。それに……)

 一番はやっぱりイザークに会える喜びと、彼の疲れを少しでも取れればという想いがあるからだ。

「エレノア様は健気ですわ。イザーク様も喜んでいます」
「そうかな?」

 ニコニコと笑うエマに、エレノアは思わず聞き返す。

 こんなに頻繁にやって来て、迷惑ではないだろうか、とエレノアは思っていた。イザークはもちろん嫌そうな顔は見せないが、「無理してないか?」ととても心配そうな顔を見せていた。

『エレノア、俺は自由に活き活きと生きる君を縛りたくはない。どうか、俺のために無理はしないで欲しい』

 前回来たときに、イザークに言われた言葉を思い返して、エレノアはしゅんとする。

(私はやりたくてやっているのに、無理してるように見えちゃうのかな? こうしないとザーク様に会えないのに……)

 心の中で思ったことをふるふると首を振って否定する。

「あんまり来ちゃだめだよね」

 ポツリと溢せば、エマがすかさず否定する。

「エレノア様! そんなことはございません!! イザーク様も嬉しいに決まってます! ただ……」
「ただ?」
「お二人共、お互いの気持ちを考えすぎなんです。特にエレノア様はね?」

 眉尻を下げ、微笑むエマは続ける。

「エレノア様の気持ち、とっくにここにあるんじゃありません?」
「わた、しは……」

 エマに心臓の位置を指さされ、エレノアは思わず胸元のワンピースをぎゅう、と握りしめた。
< 73 / 126 >

この作品をシェア

pagetop