私は誰にも恋しない
「…はぁ。あんた、見かけによらずバカだな」

神山君がため息をつきながら言う。

「俺が惚れさせるって言ったのは兄貴じゃなくてあんたの事なんだけど。元々実の兄弟なんだから気持ち伝えたらダメでしょ。
それよりも兄貴を好きな女達を自分に惚れさせた方が楽だと思って言ったのに」

「え?そうだったの⁈…んー、でもさ、兄弟だからって自分の気持ちを隠して好きでもない相手と付き合うのって神山君がしんどくなると思う。それに…神山先生が神山君を弟としてでも大事に想ってる家持ちは変わらないんじゃないかな」

「…あんたみたいな女は初めてだよ。俺が兄貴を好きだって気持ち伝えても気持ち悪がらないし、さっきだって怒るところのはずなのに俺の心配なんかして…」

神山君が小さい声で言う。

「行こっ、神山君。せっかく奈良まで来たんだから楽しまないと」

私は神山君の手を繋ぎ、宮野さん達のところに向かう。
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