溶けたラムネ入りの炭酸ジュースは、美味しくない。
先にエスカレーターに胡桃が乗ると、僕も後を追うようにエスカレーターに足を乗せる。


僕が乗ったと分かると、胡桃はくるり周り、僕がいる後ろを振り返った。

エスカレーターに先に乗った背の低めの胡桃が、僕と目線が同じぐらいになった。



「先輩、デートみたいですね、ふふっ」

胡桃はこういうことを平気な顔して言うタイプなのだ。

大真面目な僕とは正反対。

さっきちょっとだけ可愛いって思ったのは、隠しておこう。

絶対、調子乗るから。平気なフリ。気にしてないフリ。

「デートなんかじゃないだろ、本屋に行く胡桃とただの付き添い人だろ」

デートなんか言われたら、デートなのかと意識してしまうだろ。

ちょっとだけ、胡桃の性格がわかってきた気がする。

いや、そんな気がするだけで、本当の胡桃なんて、これっぽっちも知らないよ。

わかったフリするのが、得意なだけ、思い込みが激しいだけ。

僕って、こういうところありがちなんだよな。

他人のことこういう人なんだろうなってわかった気がしても、本当は違かったときもある。

この人ってこんな一面もあるんだなって思える、あの瞬間が、ちょっと楽しかったりもする。


胡桃の性格は、明るくていいな。

僕なんてこんな、ひねくれものでしかないのに。


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