溶けたラムネ入りの炭酸ジュースは、美味しくない。
何も出来ないし、何もしてあげられることも思いつかないし、ただ何もせずにそっとしておくだけよりは、心配なことを表現できて、いいのかもしれない。
こういうときに使う“大丈夫か”の言葉は、いざ自分が投げかけられた時、あまり信用するべきではないんだと、自分が口にしていて思ったね。
「痛い、です。けどしばらく横になっていたら、落ち着いてきました。…あの、お願いがあるんですけど」
彼女はそう言った。
僕は少し身構えた。
お願い?そんな頼まれるような関係性でもなければ、僕は名前すらも知らない。
「…何でしょうか」
いろんなことを考えたら、答えるのに間が空いてしまった。
彼女は、あっさりとした口調で
「蓋、開けてもらえませんか」
わりと呂律が、さっきよりも回るようになってきたのか
はっきりと、そう言った。
地べたに座り込んだまま、机の上においてあるペットボトルを指を指しはじめた。
ただ、ペットボトルの蓋を開けて欲しいだけだったらしくて、身構えた僕の気持ちは何を期待したんだろうかと、少し恥ずかしくなった。
僕は、ペットボトルを手に取り、蓋を開けた状態で彼女に渡した。
「ありがとうございまッ……」
水を開けてもらった彼女は、お礼を言いながら、そのまま口に水分を運んだ。
ゴクゴクゴクと、勢いよく水を飲む姿を見て、なんとなく初めて飲んだと言ったお酒も、この勢いで飲んだのかと思うと、納得することが出来た。
「ぷはぁッ……はぁッ…。水って、こんなに美味しいんですね」
勢いよく水を飲んだかと思えば、その飲んだ水を、彼女は美味しいと言った。
それほど、体が欲していた水分なんだろうか。