溶けたラムネ入りの炭酸ジュースは、美味しくない。

店の外は、明るくなり始めていて、もうあと50分くらいで、シフト交代時間の6時になろうとしていた。

彼女は、僕が作業をしている間、ぐっすりと寝れたのか、水を飲んだことによって目が覚めたのか、スッキリとした表情をしていた。

「もうこんな時間なんですね」

彼女は、スマホの電源ボタンを押してから、待ち受け画面を見つめるように呟いた。

「そうですね」

僕は結局、この人に何もしてあげられないまま、時間だけが過ぎていくばかりで、人の役に立つことって難しいんだなと感じた。


「もう少しで、始発も動き始めますかね」

そういいながら彼女は、スマホで始発の時間を調べ始めた。

「あの、メモ出来るもの、お借りしてもいいですか?」

「全然いいですよ、こんなのしか無いですけど」

そう言って僕は、シフト交代のときに、よく連絡用で使っていたメモ用紙と、自分の胸ポケットに入れていたボールペンを急いで渡した。

紙とボールペンを受け取って、始発の時間をメモし始めた。


僕はお客さんが入ってきて、まだ仕事中だということを、思い出して、一言声をかけてから仕事に戻ることにした。


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