ドロ甘な愛を稀血に溶かして
私語を慎むべき図書室なのに
『うちに来たら、猫ちゃんナデナデし放題ですよ~ 今日の放課後、遊びにきて欲しいなぁ~』
貸出カウンター前、俺の隣に座りながら、ひたすら話しかけてくるし。
『家には行かない。俺に構わないで』
迷惑顔で俺が会話を終わらせても、彼女は全く動じない。
むしろベタベタが増す一方。
『あっそうそう、もうすぐ2年生は修学旅行ですよね。土日含めたら、約一週間も環先輩と会えないなんて。私、淋しくて泣いちゃいます~ おみやげ楽しみにしてますね!』
俺に肩をぶつけながら、ウインクまで飛ばしてきたり。
悪い子じゃない。
良い子ないんだけど……
俺の心の中に土足で踏み込んでいい相手は、一人だけなんだ。
――命をかけて、彼女を守る。
小4の時の俺が、自分を犠牲にしてでも愛し抜くと決めた相手。
幼なじみで婚約者の、美織ちゃんだけだから。
『元』をつけるのを忘れちゃった。
正しくは、元婚約者です。
悲しいことに……