ドロ甘な愛を稀血に溶かして

美織ちゃんの机の上、俺は一枚の紙を広げて置いた。


「……これは」


呪いのお札でも、真ん丸な瞳に映したかのよう。

美織ちゃんはガッと目を見開きながら、歯をガタガタと震えさせている。



彼女が恐怖に襲われているのも、無理はない。

だってこの紙は、破られていない方。

俺の家で10年以上大事にしまってあった、もう一枚の『婚約証明書』だから。




「ねぇ美織ちゃん、俺たち婚約してるよね?」



無表情のまま放った、俺の冷たい声に


「二人って、そういう関係だったの?」


「環くんが美織ちゃんに話しかけてるとこ、見たことないよね」


「美織ちゃんって、環くんに避けられてる感じだったのに」



クラスメイト達からは

「ウソでしょ? 信じられない!」と、悲鳴の嵐。

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