身長差25㌢の、私と彼。


「え、なにそれ。ケンカ売ってるん?」


「は?なんの話?」


「私はチビなんで、前の席に足が届いたことなんてないんやけどー?」


「あ、そっかー。それはそれは…。」


そう言いながら、眉根にシワを寄せて『かわいそー』と言わんばかりの表情をしてみせてきた。


「なっ…!ちょっと──」


「ん、んんっ!」


遠くの方から咳払いが聞こえた。


やば。ちょっと声が大きかった…。


「なに?加野屋さん。言いたいことあるならこっち来てから言ったら?」


そう言って結城くんは、自分の隣の席を指差す。


私は座席に置いていた小さめのショルダーバッグを手に持ち、結城くんの挑発に乗って彼の隣の席に移動した。


「結城くんさぁ」


結城くんの隣に座ってさっそく文句をつけてみる。


「人が気にしてるコンプレックスをイジるようなことやめて?」


「コンプレックス?何のこと?」


「身長のこと!私、身長低いの気にしてるの。だからあんまりイジらんでほしい」


「そうなん?知らんかった。ごめんな。」


「う、うん。」


意外と素直に謝られてちょっと拍子抜け。


結城くんって、やっぱ思ってたほど悪い人じゃないんかも。うん。


すると、結城くんは目線だけ私に向けて、話を続けてきた。

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