身長差25㌢の、私と彼。
「君たち、ちょっといいかな?」
その声にハッとして、2人で一緒に声がした先に顔を向ける。
見上げた先には、体格のいい車掌さんが立っていて、こっちを見下ろしていた。
「学生さん?日中、こんな時間に何してるのかな?」
高校生の男女2人が日中、新幹線に乗っている、なんて、よくある話ではない。
威圧感たっぷりのその車掌さんを、私はおそるおそる見上げた。
大きめの体。
低いトーンの声。
車掌さんの雰囲気に気押されてしまい、私は一瞬にして硬直してしまった。
何と言ったらいいのか分からない。
対して、結城くんは臆することなく堂々と「修学旅行の帰りです。1本、乗り遅れて。」と言いながら乗車券代わりのものを取り出して、車掌さんに渡した。
車掌さんは渡されたものを見て、チラッと私たちをもう一度見た。
「学校の先生達には報告してるのかな?」
「はい、もちろん。発券する時に駅員さんが確認してくれましたけど?」
何か文句でも?とでも言わんばかりの結城くんに、車掌さんはそれ以上、何も言えない様子で。
「…そうか。博多まで気を付けて帰りなさい。」と言って、切符を結城くんに返して去っていった。