王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
 蜂蜜パックを終えて、エイミーは肌を整えられた後で、スージーに手伝ってもらいながらドレスに着替えた。

 この薄紫色のドレスは、半年以上前から王都の有名デザイナーに頼んで作ってもらった可愛らしいもので、色はもちろん、ライオネルの瞳の色に合わせた。

 ライオネルの瞳はもっと濃い紫色だが、濃い紫色のドレスは初夏には重たすぎると言われて薄紫になっている。

 エイミーの小柄で華奢な体を妖精のようにふわふわに彩るドレスは、しかし十七歳になるエイミーの年齢に合わせて、背中が広めに開いたちょっとだけ大人びたデザインだ。

 背中のラインを綺麗に見せるために、いつも下ろしている髪を、今日はすべてアップにするという。

「お嬢様の髪はふわふわなので、おろしていてもとっても可愛らしいんですけど、今日は大人をアピールしましょう。色気で勝負です」

(色気……)

 エイミーは自分の体を見下ろして、果たしてどこに色気があるだろうかと考えた。

 小柄で目が大きいエイミーは、小動物のように愛くるしいとは言われるけれど、セクシーだと言われたことは今まで一度たりともない。

 それに、スージーが頑張って色気とやらを引き出してくれたとしても、ライオネルの心に響くとは思えなかった。ましてや今日は――

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