コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—

会いたいけど、会いたくない

噂が広まり始めた頃、水惟は氷見に会社から少し離れたカフェに呼び出されていた。

「ごめんね、社内じゃちょっと話しにくくて。」
「いえ。」
水惟にはなんとなく呼び出された理由がわかっていた。

「社内で噂が広まってるの、気づいてる?」
氷見の問いに、水惟は無言で頷いた。

「水惟が私に贔屓されてるとか、深山さんの奥さんだから優遇されてる—とか…」
「はい。」

「多分、乾が発信源だと思うんだ。ほら、この間の新河文庫(しんこうぶんこ)のキャンペーン…私が割って入って水惟の意見通したでしょ?あれが原因だと思うんだよね。」
「…私も…そんな気はしてます…」

水惟がそう言うと、氷見はテーブルに手をついて頭を下げた。

「ごめん水惟。私が余計なことしたから…」
「えっそんな…氷見さん、やめてください!」
水惟は焦って氷見の頭を上げさせようとした。

「…元々、クリエイティブに配属になった時から少しこういう事はあって…」
水惟は油井の顔を思い浮かべた。

「深山さんと結婚してからは社内の知らない人から“深山さんと釣り合ってない”とかあれこれ言われたりしてて…なので今回が特別ってわけでもないんです。だから氷見さんのせいじゃないです。」
水惟が苦笑いで言うと、氷見は顔を上げた。

「今回は仕事のことで色々言われちゃってるみたいだから、仕事で挽回できるようにがんばります。」
水惟が言った。
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