コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—

蒼士の愁い

結局水惟はしばらく休職することになった。

「ただいま。」
「おかえり。ご飯できてるよ。お風呂も沸いてる。」
水惟が笑顔で迎える。

「………」
蒼士は塵ひとつ無いんじゃないかというくらいピカピカの室内を見て、水惟にわからないように溜息を()いた。
水惟が休職して3週間、毎日手の込んだ朝食で送り出され、帰宅すれば何品もある夕食と暖かい風呂が用意されている。
シャツのアイロンもかけられ、靴もピカピカに磨かれ、室内はいつもきれいに掃除されている。

(水惟も食事は前ほどではないけど食べるようにはなった…けど…)

「水惟、休職中なんだからのんびりしててもいいんだよ?」
蒼士の言葉に水惟は首を横に振った。

「…せめて家事はちゃんとやらなきゃ…」
“休職している自分には存在価値がない”とでも言っているようだった。

蒼士が気になっているのは、水惟の私室のデスクに置かれたノートパソコンと、付箋だらけのデザイン関連の本だった。
食事の片付けが終わると、水惟は部屋に籠もるように過ごしていた。

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