コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「蒼士は…今でも私のことが好き…でしょ…?」

「水惟…」
「だったら—」

言いかけた水惟に、蒼士は溜息を()く。

「ダメだよ、水惟。」
「どうして…?」

「…水惟は…今、またデザイナーとして第一線に戻った。」
「………」

「これから深端でやり残したことの続きをやっと始められるんだ。」
「やり残したこと…」
蒼士は頷いた。

「その時に、きっと俺の存在がまた水惟の邪魔をするよ。」
「邪魔…?」
蒼士はまた、小さく溜息を()いた。

「俺は…あの時水惟と結婚したことを後悔してた。」

「え…」
蒼士の思いもよらない言葉に、水惟の胸がキリ…と軋む。

「じゃあやっぱり…私と結婚なんてしない方が良かったって…」
「違うよ、そういう意味じゃない。俺が水惟のキャリアを邪魔したことを後悔してるんだ。」
蒼士は水惟の頬をそっと撫でた。

「本当は…水惟がもっと深端でキャリアを積むのを待つべきだったんだ。デザイナーとして、誰からも認められる仕事を水惟の名前でできるようになってから結婚するべきだった。」
「………」
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