コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「なんか普段より仕事っぽい服装だね。」
蒼士が水惟を見て言った。

今日の水惟はデニムではあるもののパンツスタイルで、きちんとした雰囲気のストライプのシャツにまとめ髪、肩からかけたバッグは普段会社に持って行っている仕事用のものだ。
蒼士の言う通り、普段はカジュアルなワンピースや変わったデザインのシャツなどの“グラフィックデザイナーらしい”服装で仕事をしている水惟にしては、幾分真面目さを感じさせるオフィスカジュアル系の服装だ。

(会社の研修かもしれないから浮かれすぎてない感じの…)
(子どもっぽくなくて…)
(…でもかわいいって思われたいなぁ…)
(いやでも、仕事みたいなものだし…)
(深山さんと並んで恥ずかしくない格好にしないと…)

そんな風に、約束を交わした日から水惟が考えに考えて今朝、つい先ほど決定したコーディネートだった。

「変…でしたか?」
「ん?あ、ごめん、そういう意味じゃなくて。意外だったから。そういう感じも似合うね。」

蒼士に笑顔で言われて、水惟は思わずドキドキしてしまう。


(似合うしかわいいとは思うけど…デートっぽくはないな。)
蒼士はそんなことを考えていた。

やっぱり水惟は自分に特別な気持ちは無いのかもしれない…と思った。

< 205 / 214 >

この作品をシェア

pagetop