コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「あ、あの…わたし、深山さんが思ってるよりほんとに子どもなので…」
「…もしかして初めてだった?」

恥ずかしそうに赤面して頷く水惟を、蒼士はたまらなく可愛いと思ってしまいギュッと抱きしめた。

「かわいい」
そう言って、蒼士は水惟の唇に親指で触れ、今度は啄むように唇を重ねる。

「本当は俺も“水惟”って呼びたかった。」
「え…」
キスをしながら、蒼士が囁くように言った。

「洸さんとか、他の人たちが名前で呼んでるのに—」
「…んっ…」

「俺だけ呼べないって()だな…って」
嫉妬を滲ませた蒼士のキスは静かに熱を帯びていく。
「ぁ…っ…ふ…」

必死に応えようとする水惟の唇が割り開かれ、吐息と熱が蕩けて混ざり合う。

「水惟」

蒼士に抱きしめられた胸の中で、水惟は鼓動の音以外何も聞こえなくなってしまった。
どうしたら良いのかわからず、蒼士の胸に包まれた手や顔を少しだけギュ…と押し付けてみた。

「水惟、かわいい」

蒼士の呼ぶ名前がくすぐったい。


——— これ…キミの作品?
——— すごく良い作品だね、なんていうか—

水惟は蒼士に初めて会った日のことを思い出していた。

(信じられない…深山さんと…)
水惟の心臓はこれ以上ないくらいの早鐘を打っている。

深端グラフィックスに入社できたことも、
蒼士と再会できて一緒に仕事ができていることも、
今日こうして二人で出かけていることも、
水惟にとっては一つ一つが奇跡のように特別なことだった。

「…みやまさん…あの…」

「ん?」
「…えっと…やっぱりなんでも…ないです…」

(あの日のことは…深山さんが泣いちゃうくらいのデザインができるまで…内緒…)

(私はあの日から…)

「深山さんのこと、大好きです」

そう言った水惟を蒼士はまたギュッと抱きしめて愛おしそうに頭を撫でた。

fin.
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