コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「今日はありがとうございました。夕飯までご馳走になっちゃって…ごちそうさまでした。」

蒼士に家まで送り届けられ、車から降りたところで水惟が言った。

「こちらこそ。楽しかった。」

「「………」」

一瞬、二人揃って無言になった。

「…今日、デートだったらもっと可愛いカッコにすれば良かったです…」
水惟が頬を赤くして、俯き気味に苦笑いで言った。

「…さっきも言ったけど、また出かければ良くない?」
「は、はい、そうですよね…」

「可愛いとか考えすぎないで、いつもの藤村さんらしい格好がいいけど。」
「で、でもっ、もっと女子っぽいとか大人っぽいとか…」

「藤村さんは藤村さんらしい方が可愛いと思う。」
「え…」
水惟はパッと顔を上げて、蒼士を見上げた。

「俺、藤村さんのことが好きみたい。」

「え……」

「その反応、どう取ればいいの?」
水惟の考えが読めない蒼士は困ったように笑って言った。

「え、えっと…びっくりしちゃって…信じられない…」
水惟の心音がどんどん早くなる。

「私も深山さんに憧れているというか……す……すき……なんです…けど…でも深山さんは大人って感じで私は子ど—」
焦って早口になる水惟に蒼士は不意打ちのようなキスをして笑った。

「俺は藤村さんが思ってるよりガキだよ。」
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