コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—

来訪

「あ…一疋屋(いちびきや)のゼリー…!」

ある日、午後から出勤した水惟が飲み物を取り出そうと事務所の冷蔵庫を開けて言った。

一疋屋は老舗の高級フルーツ店で、パッケージデザインも色鮮やかでかわいいためフルーツゼリーやジュースなどが手土産としてとても人気がある。

「さすが水惟ちゃん、すぐ気づいた。あとでおやつに食べようね。」
蛍がくすくすと笑いながら言った。

「これどうしたんですか?」
「ん…?んー…」
蛍がなぜか答えにくそうにしている。

「…?」
「それね、蒼士くんのお土産なの。」

「え…」
「今ミーティングルームで洸と話してるよ。」

「………」
一疋屋のフルーツゼリーは昔から水惟の大好物だ。
(…べつに…普通にギフトの定番だし…)

(…って、そんなことより…いるんだ、今…なんで?)
水惟がリバースデザインで働いて4年、蒼士がこの事務所に来るのは初めてのことだ。

「水惟、ちょっと話いいか?」
水惟がパソコンに向かっていると、ミーティングルームから洸が顔を出した。

「え…はぃ…」
ミーティングルームに誰がいるのか知っている水惟は、渋々という表情で部屋に向かった。
その様子を啓介はまた興味津々の表情で見ていた。
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