コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「この度はロゴのご依頼ありがとうございます。」
湖上に会うと、水惟はまずお礼を言ってペコリと頭を下げた。

「いえいえ、こちらこそ。受けていただいて。」
湖上が笑顔で言った。

「この際だからロゴも新しくしちゃおうかしら〜ってポロッと言ったら、深山さんがその場でSUIさんの過去のロゴの事例を見せてくれて。」

「え…」

「どれもすっごく良い感じで、この人ならうちの雰囲気に合うロゴを作ってくれそうだ〜!って思ったので、是非!って。」

——— 湖上さんがぜひ水惟にお願いしたいって言ってくれてるんだ

蒼士の言葉に嘘は無いが、そのきっかけを作ったのが蒼士だという事実は聞かされていない。

「過去の事例をその場ですぐ…」

「個人的にも藤村さんのデザインが好きなので、生川さんにお願いしてタブレットにいくつかまとめさせてもらいました。」
蒼士が営業マンの顔で言った。

「…そう、だったんですか…」

“カフェやホテルのデザインをしてみたい”という水惟の夢を覚えていた蒼士が取ってくれた仕事だと意識し、水惟はまた気持ちを騒つかせた。

「…ありがとうございます…」
水惟が俯きがちに蒼士に言った。

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