コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「水惟ちゃん、スピーチ頑張ってね。」
「わ〜!思い出させないでー!」

「水惟、客はみんなジャガイモだと思え。」
洸が古典的なアドバイスをする。

「それ…効果があったためしがない…」
「じゃあ手のひらに“人”って書いて飲み込め。」
役に立たなそうな洸のアドバイスに水惟は不満そうに眉間にシワを寄せた。


「水惟!」
今度は冴子が声をかけた。

冴子は会うなりまた水惟を抱きしめた。
「わ、冴子さん!来てたんだ!」
「うん、うちの部署が関わった案件もいくつか受賞しててね〜」

(さすが深端…やっぱり深端の人もいっぱい来てるんだよね…)
水惟は冴子にわからないくらいの小さな溜息を()いた。

「水惟はスピーチあるのよね?」
「もー!みんなそうやって思い出させるから緊張するよ〜!」
水惟の様子に冴子は「あはは」と笑った。

「いい?お客さんはみんなカボチャ!よ。」

「冴子さん、それ〜…」

「ん?」
「なんでもない…おかげでちょっと力抜けたかも…」
「そ?」

冴子からも古典的なアドバイスを貰ってしまい、水惟は思わず脱力した。
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