辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 短めに整えている赤い髪。前髪が額(ひたい)に落ちかかってきたのを、うっとうしそうにかき上げる。青い目は周囲に注意を払っていた。この森は幼い頃から出入りしていて、庭のようなものではあるが、いつ、どこで魔物が襲いかかってくるかわからない。

「ごめん、兄上……!」

 ようやく弟のメルリノが追いついてきた。ラースは弟に愛情たっぷりの目を向ける。

 メルリノは今年十五歳になった。辺境伯家においては、剣術より魔術を得意とする珍しいタイプだ。

 兄のラースが赤い髪を短く整えているのに対し、メルリノの髪はもう少しオレンジがかっている。その髪を首の後ろで一本に束ねているのは、魔力が髪に宿っているからだ。

 いざという時は、その髪を媒介に魔術を発動するらしい。らしいというのは、ラースには魔術の素養が皆無であり、そのあたりがさっぱりわからないからだ。

「お前はもうちょっと体力つけた方がいいな」
< 8 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop