love or die~死亡フラグ回避は恋愛ありえない幼なじみと×××せよ!~

ナイ、のはじまり

 甲斐を「ない」と思ったきっかけを思い出す。
 中学三年のとき、学校に遊びに来ていた先輩に絡まれている友達を助けたら、今度は私が絡まれた。

 昔はそれなりに仲が良くて、遊んだこともある先輩だったのに、手を強く引っ張られたら全く歯が立たない。まるで知らない男の人のようで、ああこれは敵わない、と思ったんだ。

 先輩が顔を覗き込んできて、
「甲斐とやった?」
 何度となく繰り返されたいじりをされたのが嫌だった。

 周りの先輩達がニヤニヤと見ているのが分かる。
 数的有利をつくっていじってくるあたり、ズルい。完全に囲まれて、孤立無援のポゼッション争いをしている気分になる。

「そんなの先輩たちに関係ないじゃん」
 と言ったら、嘲笑された。

 関係ないじゃん、とまぜっかえされて、いいなぁやりてーと言われる。
 やや強引に振り払おうとするけれど、出来なくて、結局友達が呼んで駆けつけた甲斐が、「すいません」って謝ってその場から連れ去られた。

 やっぱできてんじゃん、と笑う声が飛んでくる。
 その時掴まれた手首が痛くて、少し怖い。
 中学に入ってから、いつの間にか甲斐は私より背が高くなっていて、力も強くなっていた。

 先輩たちに言われた言葉が引っかかっていて、私は甲斐の手を振り払う。
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