love or die~死亡フラグ回避は恋愛ありえない幼なじみと×××せよ!~

「これでOKだと思う。ルールによれば」

 甲斐の唇が目についたけれど、逸らして、「ありがと」と言う。

 先輩とキスするために、甲斐とキスする。そんなバカなルールってある?と思う。

 でも、事実そのルールに私の命は握られている。今もまた、5回ほど失敗してやっとこの行動に至ったのだ。

「美玖」
 と甲斐に言われて、振り返ると、もう一度唇が触れた。
 は?と思ったら、上唇をくわえてきてしばらくすると深く入って来る。蒸せそうなほどに熱い息が交じって、苦しくなった。

 息があがって甲斐の胸を手で叩いたら、やっと離してくれる。
「ほら、こっち側もやっとかねーと。先輩がその気になった瞬間、死ぬかもしんない」
 甲斐の少し上気した顔を見て、せっかくほどよい感じだった余韻が台無しになった。

 初めてだったのに、いかにも、ガッツリ重めのキスをしてしまった時点で、
「ウザ……」
 とだけしか言葉が出てこない。

「これで、美玖の要望通りのこと、出来るはずだ」
 と甲斐は言った。
 この数分後、屋上に先輩が来るのを私も甲斐も知っていた。なんせもう5回経験しているのだから。

 先輩とキスして、甲斐のいう提案を拒否して、他の方法を探して、と5回試行錯誤の末に全て失敗。そして今、こうして甲斐とキスすることになった。
 失敗のたびに神社の境内に引き戻されるときの、絶望感にはたまらないものがある。

 今回こそは大丈夫なの?と思うものの、失敗の前例しかないため、不安はぬぐえない。

「神社に戻ったときは、また考えればいいじゃん」

 甲斐は気軽に言って、じゃ、と屋上から去っていく。

 絶対にあり得ない、と思っていたのに、幼なじみとキスをしてしまった。
 私自身の経験として、刻まれてしまった時点で、前の5回とは何かが変わってしまったのはたしかだ。
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