俺様同期の溺愛が誰にも止められない
知り合ってからの時間が長いとはいえ、私は影井素晴という人間をよく知らない。
学生時代から辛辣なことを言われ痛いところを指摘されてきた私には影井に対する苦手意識があるけれど、だからと言って人前で悪口を言ったり噂話をする人間ではないのも知っている。
どちらかというと影井の辛口は私限定で、他の人たちには優しい気もする。
だからこそ私は影井に嫌われていると思っていたし、距離をとるようにもしていた。

「ここでいいよな」
迷うこともなく慣れた様子で影井が入って行ったのは、大阪駅の周辺にある有名ホテル。

駅から少し距離があるために人通りが多いわけではないが、ホテル自体は4つ星の海外チェーンホテル。
病院に勤める女子の間でもここのモーニングが美味しいなんて話が出る場所だ。
優紀とも休みが合えば来てみたいねなんて言っていたからここのモーニングが食べられるのはうれしいのだけれど、相手が影井となれば話は別。

「別の所がいいのか?」
「いいえ」

躊躇う気持ちが顔に出ていたようで聞かれてしまったが、問題なのは場所ではない。
影井と二人きりってところに問題があるのだが、それを言い出す勇気もない。
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