更生係の憂鬱生活 【番外編】
ほぼほぼ初対面にも関わらず、馴れ馴れしく名前を呼ばれたことよりも、
京平の質問に、パンッとクラッカーを鳴らされたみたいな衝撃が脳を襲った。
他人、敷かれたレール、人生、詰まらない。
まさに、目からうろこと言うべき状態だった。
そうだ、その通りだ。
生きていても白黒で味気がないのは、誰かから無理矢理強制された人生を生きているからだ。
どんなに沢山のことができても、明け透けな称賛を浴びまくっても。
楽しくない、下らない、無意味で虚しい。
ずっと胸を渦巻いていた感情の群れ。
これらはそうか、“不満”や“退屈”なんだと気が付いた。
自覚したら、モヤモヤと滞っていた胸の澱がすっきりと消えた。
カチリと欠けていた思考のパズルが埋まる。
その時初めて他人に対して真に感謝の念を抱くことができた。
まぁ、馬鹿京平が相手なのは不本意なんだけどね。
僕は、すんなり京平の言葉に賛同した。
『確かに、他人に縛られた人生なんてクソ喰らえだね』
僕は僕のやりたいように生きる。
そうする権利が、力がないなら、自らの手札を使って、手に入れてしまえばいい。
その日、誰かの願いで完成された偽物の仮面を脱ぎ捨て、操られていた幾つもの糸を断ち切った。
そして、その後、僕は京平や他の不良と呼ばれる奴等とつるみ、BLAZEを結成した。
京平、奏、代那。
いずれの3人との出会いはとても刺激的で、僕は初めて仲間というものの良さを知った。
他人に従うのではなく、生きるまま好き勝手に過ごすことの楽しさも。
教師達からの信頼・期待は見事に崩れ去ったし、最後はむしろ脅威にすら見られてたけど、そんなことは心底どうでも良く感じた。
不良グループと絡んでいることについて、親からは一応咎められはしたものの、
習い事を完璧に修め、勉強を常にトップクラスに保っていたら多少の我儘は許された。