片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして
 突如、娘を持つ父親みたいなことを言うのでポカンとしてしまった。

「部長より偉いとなると、役員とか社長になってしまうんですが?」

「ほぅ、そう言うのなら町田は社内恋愛をしているんだな」

 しまった、誘導尋問だと気付いた時には遅い。部長はしたり顔で微笑む。社内でやり手と一目置かれる会話術で私からするする情報を引き出す。

「……」

「黙っても町田は顔に出やすい。ひとつ忠告しておくと社内恋愛は止めた方がいい、どうしてかと言えばーーこんな凡ミスする。ほら、ここ間違ってるぞ」

 提出した資料のチェックを始め、指摘する。

「すいません」

「目が充血してる。寝ないでやったんだろう?」

「……はい」

「デートが楽しみで仕事がおざなりになるのは感心しない。社内事情を知る男であれば手伝ってやるなりすればいいのに。はぁ、何をやっているんだか。
 もちろんこれは君に任せた作業じゃないと分かっている。だが、引き受けたなら責任を持ちなさい」

 細かいミスがどんどん発覚して、申し開きなど出来ない。

「修正は僕の方でやる。町田はデートに言っていいよ」
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