片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして
 部長は顎に手をやり、私と誠の服装を眺めた。誠もデート仕様で仕事をしにくる格好ではなく、こうして並ぶと揃って出掛けそうだ。

「町田も仕事が残ってたの? 昨日は無いって言ってたのに」

 そう、バーに誘われた時点では抱えている仕事は無かった。

「あの時は無かったんだけど……朝霧くんこそ」

「俺はまぁ……提出は明日でも良かったんだが、眠れなくてさ。あとじっとしても居られなくて先に片付けようと」

 あの後、誠は眠れなかったのか。睡眠不足の理由が私であると言外に込めていて、それは怒りというより、こちらを窺う感じ。

「そうなんだ」

 部長が聞いているので深い事情までは話せない。誠の袖を離さず、もう一段階強く握ることで私の気持ちを表現する。

「町田は後輩のフォローで徹夜だ。目が真っ赤なのもそのせいだよ。今から何処へお出掛けか知らないが、体調は気遣ってあげて」

 助け舟を出してくれた部長。てっきり、からかわれると身構えていたので意外だ。

「常々感じていましたが」

 ここで誠が口を開く。

「管理職ならば部下への仕事配分をしっかりすべきです。現状、町田に偏り過ぎてますよね? 部長こそ彼女の体調を気遣って下さい」
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