片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして
「部長ってば冗談はよしてーー」

 ここまで言い掛けた時、視界の隅で誠が踵を返すのが見えた。

「待って!」

 私は急いで彼の袖を引き寄せる。

「本当に部長と私はなんでもないの」

「おやおや、なんでもないって言い方は寂しいなぁ」

 すかさず部長がちゃちゃを入れてきて、反射的に睨んでしまう。すると悪びれる様子なくニヤニヤし始めた。

「……もしかして全部分かった上でやってます?」

 私は予感する。部長の勘の鋭さは嫌というほど知っているのだ。

「全部? 僕が把握しているのは一部でしかないよ。町田がこれからデートに行く相手は社内の人物で、その人物は昨日頼んであった件を放り出して帰ってしまった。だから休日出勤してるんだよね?」

 掴んだ誠の腕がピクリ、反応した。どうやら図星らしい。そういえば昨日の彼は残業を切り上げ、私とバーへ行ったっけ。

「おかしいなと思ったんだ。2人とも僕へ資料を提出するのに、なんで協力してやらないのかって不思議だなぁと。こそこそ休日出勤してさ」
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