片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして


 カフェに着いてフレンチトーストを頼むと私達は他愛のない話を沢山した。とにかく色々話をしてみた。

 好きな食べ物や休日の過ごし方、最近観た映画の話題等はこれまで遠くで眺めるしかなかった相手を身近に感じさせる。かつリラックスしてやりとりが出来て、自分を飾らないでいい。

「先にフレンチトースト頼んでよかったの?」

「母さんは俺達の顔を見たらすぐに帰るだろう。それに茜が待ち切れないと思って」

「え、また顔に出てる?」

「出てる、ニコニコしてるし」

 休日のカフェは賑わい、フレンチトーストの香りで包まれている。まぁ、待ち遠しくないと言えば嘘になるが……。
 柔らかく微笑む誠を見れば、つまらない言い訳は溶けていく。

「今日はありがとう、オシャレをしてくれて嬉しい。ワンピース、似合ってるよ」

「そ、そうかな? 服は良くても目は充血してるし、クマもあって」

「寝不足になった事情には今も腹は立つ。でも俺の為に頑張ってくれたんだって思うと、その部分は嬉しい」

「後輩に強く言えない私を頼りないと感じない? みんなに良い顔したいんだとか呆れない?」

「感じないし呆れない。あぁ、でも」

「でも?」

「俺に頼って欲しい、俺だけに良い顔してくれたらいいのにと思った」
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