片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして
「いやいや冗談ですよね? 本当に付き合ってるんですか? 先輩と?」

「あぁ、付き合いたいと思ってる。君が邪魔で仕方がない。今すぐ告白したい程だ」

 2人は噛み合わないやり取りを暫し繰り広げる。

「朝霧さんなら選びたい放題じゃないですか? 社内でもかなり人気あるんですよ?」

「興味ない」

「信じられない! 遊びにしても、もっといい人が居るのに!」

「はは、遊びのはずがないだろ? 今から母親に紹介するくらいだし。別に君に信じて貰えなくてもいいが、母が来たら帰ってね」

 親に紹介するという響きで後輩は凍りついた。それでも女のプライドが硬直を許さず、怒りで顔を染めていく。

「先輩も何か言ったらどうです?」

 鋭い目線を寄越され、戸惑う。

「何かって……」

「そういうオドオドした性格が苛つくんですってば! 残業や休日出勤を代わりたくないなら先輩の口で言えばいいじゃないですか! 朝霧さんに言わせるなんて卑怯です!」

 これは、いわゆる逆ギレに当たるが一理ある。
 私は一度大きく深呼吸して決心を発した。

「今後はあなたのやるべき仕事を肩代わりしない。もし頼んできたら部長に報告する。後、誠との時間を大事にしたい。もう帰って!」

 誠が手を繋いでくれていたので告げられたと思う。今まで言えなかった旨がひとつ開放されると心が軽くなり、奥底にしまってあった一番打ち明けたい気持ちが迫り上がる。

 私と誠はほぼ同じタイミングで顔を見合わせた。
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