片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして
「茜……母さんには連絡するから部屋に帰らないか? 話したい事がある」

「うん、私も誠に話したい」

 誠がキャンセルの連絡を入れる傍ら、窓の外からこちらの様子を見守る姿を見付ける。
 後々この女性こそ彼の母親と知るのだが、私達は今にも弾けそうな恋心をテイクアウトするので精一杯。

「え、なに、やばっ、バカップルじゃん」

 カフェに取り残される後輩の恨み言など、相手にして居られなかった。




 お互いの気持ちは薄々気が付いている。けれどそれは部長や後輩など、第三者を介して知り得たもの。仮初めの恋人という衣を脱ぐには自分の言葉で伝えなければならない。

 誠の部屋に到着するなり、我先にと口を開く。

「誠! 私ーー」

「俺はーー」

 とりあえず靴を脱ごう、アイコンタクトを交わして一歩踏み入れた途端、私の気持ちは溢れてしまった。

「茜?」

「……ごめん、なんでもないの」

「なんでもない訳ない、泣いてるじゃないか? 抱き締めていい?」

 頷くと温かさで包まれる。

「誠の部屋には二度と来れないと思ってた。来れて嬉しい」

「俺も嬉しい。俺は長い間、片思いし続けたせいで臆病になってて、営業職で培った滑らかな口調やカクテルを使い口説こうとしたんだ。その結果、リップサービスだの女性の扱いに慣れていると受け取られて逆効果」
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