片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして
「好き、誠が好き」

 声に出すと、また涙が溢れてくる。

「私、自信が無いの。誠に相応しくないんじゃないか、不安で。あなたにはもっと素敵な女性が居るんじゃないかって。けど諦められない、あなたが好き」

 ひっく、ひっく、嗚咽まで漏れ、子供のように泣いてしまう。

「勘違いしない、期待しないって言い聞かせても駄目。どんどん好きになっちゃうだけ。1日限りの彼女なんて、偽装彼女は嫌だよ。本物になりたいーーして下さい」

 霞んで見えにくくても、目を開けて言う。誠は何度も頷いてくれているのが分かった。

「抱き締めていい?」

「……もう抱き締めてるじゃないの」

「だから、もっときつく抱き締めたい。茜がここに居ると感じたいんだ」

 押し潰されそうな程、強く包容される。苦しくて同時に幸せでもあって。私も彼の背中へ手を回す。
 こういうのを抱えきれない幸福と呼ぶのだろう。

「なぁ、茜」

「ん?」

「今夜こそ泊まっていかないか? 歯ブラシならあるぞ。それからプリンもな」

 返事は決まりきっているものの、あえて悩む真似をする。

「ベッドは貸してくれるのかしら?」

 悪戯な切り返しをすると、誠が額同士を重ねてくる。

「はは、一緒に使えば問題ない!」

 そして、解決策はキスと共に私へ提示されたのだった。
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