片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして


「いやぁ、社内恋愛は作業効率を下げると疑わなかったが、そうでもないみたいだねぇー。僕も考えを改めるか」

 とある日、部長が感慨深げに呟く。
 あれから私と誠は正式に交際をスタートし、喧嘩をすることもあるが信頼関係は築けている。

「何ですか? 急に。はい、チェックお願いします」

 この書類を提出すれば本日の業務は終了。
 時計を見れば定時前、待ち合わせまで余裕がありそう。化粧を直して朝食の準備を済ませておこうか、などと計画を立てる。

「ほぅ、顔がニヤけてるね。これからデートかな?」

 モニターから視線を外し、部長は書類を受け取る。

「はい、いったん部屋に戻って朝食の支度しようと」

「言うねー。ノロケもいいが資料に不備があれば直させるからな。笠原と一緒に残業コースだ、覚悟しろ!」

 部長のチェックが厳しいのは相変わらず。しかし、私もきちんと仕上げた自信があるので怯まない。

 私の残業時間は以前より減っているが、誠の方はそうもいかなくてーー営業部長への昇進が決まったから。
 今日は昇進祝いを兼ねたデート故、残業して遅刻ができない。

「ちっ、ミスが無いな。帰っていいぞ、彼氏によろしく」

 悔しそうで何処か嬉しそうに、手をひらひら振られる。

「お先に失礼します」

 一礼し、会議室を後にした。
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