しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
「あ、ダメです……!」
「今日は体調が優れない?」
違うと衣都は首を横に振った。
このまま妊娠して結婚を強行してしまったら、意味がない。
楽な方に逃げようとすることはいつでもできる。
「もう少しだけ待ってもらえませんか?私、結婚するならやっぱりおば様に祝福されたいです。一生に一度のことですし……」
「うん、わかった。君がいいって言うまで待つよ」
響はそう言うと衣都をひょいと抱き上げ、ベッドルームまで運ぶと、マットレスに丁寧に下ろした。
「あの、響さん……?」
「母さんの件は衣都に任せる。その代わり、一緒にいる時くらいは僕のことだけ考えて」
「いつも考えてます!」
心外だとばかりに声を荒らげると、響は拗ねたように口を思い切り尖らせた。
「衣都の嘘つき。一番はピアノだろう?今は母さんが二番目。僕のことは後回しじゃないか」
身に覚えがありすぎて、ついギクンと肩を揺らす。
そういえば、最近は昼間に頑張りすぎているせいか、響より先に寝てしまうことが多かった。
「今日はとことん付き合ってもらうから覚悟して」
その夜、響は開き直り嫉妬心を隠そうともしなかった。絶え間なく押し寄せる激情を衣都に注ぎ、もう無理だと何度訴えても離してもらえなかった。
提案をすげなく却下したことが、良くなかったのかもしれない。
(次は手加減……してもらおう……)
満足げに眠る響の腕の中、彼の悋気を受け止めきった衣都はまどろみの中でそう決意した。