しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
◇
(今日こそは……!)
梅見の会の三日前となるこの日。
衣都は忙しいスケジュールの合間を縫うようにして、再度四季杜の屋敷を訪れていた。
これまでことごとくなしのつぶてだったが、先日の一件に関してはわずかながら手応えを感じていた。
ひょっとしたら会ってくれるかもしれないという希望に突き動かされていた。
しかし、物事はそう都合よく出来ていなかった。
「本日、奥様は外出されています」
家令が衣都に告げたのは、綾子の不在だった。希望はあっさりと打ち砕かれた。
枯れかけの花のようにしおれた衣都を見て、家令がひと言付け加える。
「奥様から衣都様宛にご伝言を承っております」
「伝言?」
「『梅見の会には出席する』とのことです」
衣都の表情が先ほどとは打って変わって、ぱあっと輝く。
「ありがとうございます!おば様によろしくお伝えください!」
衣都は家令にお礼を言い頭を下げると、その場を後にしたのだった。
(嬉しい……!)
屋敷の門扉から出たところで、この喜びを分かち合うべく響にメッセージを送ると、直ぐに返信があった。
『きっと衣都の真心が伝わったんだね』
響も朗報を喜んでくれているようだ。衣都はすっかり浮かれていた。