しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
「ありがとうございました。もう平気です」
ひと通りの処置が終わり立ちあがろうとする衣都を光莉は慌てて止めようとした。
「無理はしない方がいいですよ!今は興奮状態だから痛くないと感じていても、時間が経って痛みが増してくることもありますから!」
「私はピアノを弾かないといけないんです」
苦痛に耐えながらも、衣都の瞳は爛々としていた。
響すら圧倒する燃え立つような激しいオーラに、思わず全身が総毛立つ。
妻にと望む女性の奮い立つ姿に、響はただただ魅力されていた。
「本当にやるんだね?」
「……はい」
改めて決意を尋ねると、衣都は何の迷いもなくそう答えた。
「無茶ですよ!足を怪我しているのに、ピアノを弾くなんて……!」
「光莉」
夫である久志に名前を呼ばれると、光莉はううっと不服そうに唸った。
すっかり困り果てていた光莉だったが、やがて諦めたように顔をあげた。
「テーピングとハサミを用意してください!あと鎮痛剤も!市販薬で構いません!靴も踵がフラットなものを!」
矢継ぎ早の注文に律は即座に電話をかけ、必要なものを手配していった。
「ピアノまでは僕がエスコートする。なるべく僕に寄り沿って身体を預けてくれ」
「はい」
「演奏が終わったら絶対に病院へ行ってくださいね!」
「光莉さん、ありがとうございます」
光莉はテーピングが届くと慣れた手つきで、衣都の右足首を固定したのだった。