しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
「酔い潰れたと思い込んで甲斐甲斐しく世話をしてくれる綾子が……か、可愛くて……。妻にするならこの人しかいないと確信したんだ」
「秋雪さん……?」
「理由はなんでも良かったんだよ。都合よく慰謝料の話をされたものだから……綾子の弱みに付け込んだ。長い間、辛い想いをさせていたとは知らなかった。悪かった」
「ああ……!」
再び涙を流し始めた綾子を秋雪は不器用に抱き寄せた。
衣都と響、律の三人はそっとゲストルームから離れた。今は二人きりにしてあげたほうがいい。
「俺、先に帰りますね」
律はそう言い残し、妻子の待つ自宅に帰って行った。
衣都と響は旧四季杜邸に残り、バルコニーで肩を並べ梅園を眺めた。
よく考えたら、梅見の会の間はゆっくり梅を眺める余裕もなかった。
芳しい梅の匂いを胸いっぱいに吸い込んでいく。
「右足は平気かい?」
「はい。光莉さんの処置が適切だったおかげです」
医者の話では無理さえしなければ、すぐに良くなるそうだ。しばらくはマンションでぬくぬく養生させてもらおう。