財閥御曹司は最愛の君と極上の愛を奏でる
「何があっても傍にいる。君を離したりしないよ――」
衣都の心を優しく包みこむような美しいバリトンに、つい聞き惚れてしまう。
この声に衣都はこれまで何度も救われてきた。
四季杜家まで押しかけてきた親戚を追い返した時も。
音大受験直前になって、風邪をこじらせた時も。
(なんでもお見通しなのね)
大海原のような懐の深さで、衣都の迷いや不安をすべてさらってくれる。なんて頼もしいのだろう。
そんな響を前にして不安を感じていたら、彼を信用していないことになる。
今はただ、愛していると言ってくれた響を信じてついていくしかない。
衣都は頬を撫でる愛しい男の手に己の手を添え、目を瞑りながら頬ずりした。
「衣都」
瞼をひらけば、情熱が迸る瞳と視線が交差する。響は頭を傾け、衣都にそっと口づけた。
最初は軽く触れるだけだった口づけが、次第に息継ぎが追いつかないほど深いものになっていく。
ワンピースの裾がたくし上げられ、太腿が露わにされた。
背中のファスナーがゆっくりと下ろされ、下着に指がかかる。
先ほどまで木枯らしが吹き荒ぶ屋外にいた響の氷のように冷え切った指が、火照った身体を滑り降りた。