しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
「ひゃんっ!」
あまりの冷たさに衣都は思わずビクンと背中をのけぞらせた。
(どうしよう……。変な声が……)
ムードを台無しにしかけない素っ頓狂な声を上げてしまった恥ずかしさで、衣都はこわごわと響の顔を見上げた。
響は笑いを堪えきれなかったようで、クスクスと笑い出した。
「続きはベッドでしようか?衣都の可愛い声がもっと聞きたい……」
甘い言葉に誘われるように、衣都は逞しい胸板に顔を埋めながら「はい」と返事をした。
ディナークルーズから帰った夜を境に、響のベッドで一緒に寝るようになった。
もちろん、ただ一緒に寝るだけではない。
響は積年の想いを晴らすように、衣都を激しく求めた。
お互い初めて同士のはずだったのに、響はいともたやすく衣都の弱点を探り当てていった。
毎夜の行為は回数を重ねるほどに快感が増し、衣都を耽溺の海に沈めた。
今宵もまた、響に楽器のように啼かされる夜がやってくる。