しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
衣都は眠気を吹き飛ばそうと、勢いよく毛布を跳ね上げベッドから下りた。
「いいえ。私も起きます。おば様の様子も見に行きたいし、ピアノの練習もしないといけないもの!」
休みだからといって、悠長に寝ている時間はなかった。
結婚に向けて、やることは盛り沢山だ。
気合十分で準備に励む衣都を、響は目を細め眩しそうに眺めていた。
「気分転換に今日の夕食は外で食べないか?衣都の好きなビーフシチューが美味しいレストランを予約しておくよ」
「うわあ!ありがとう、響さん」
二つ返事で了承すると、響は衣都の頬に触れるだけの軽いキスを贈った。
「夕方になったら連絡するよ。外で待ち合わせしよう」
「はい!」
ディナーの約束を交わすと、衣都は出勤する響を玄関まで見送った。
扉が閉まっていき、後ろ姿が見えなくなると、うーんと大きく伸びをする。
今日も忙しい日になりそうだ。