しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
◇
「おはようございます……」
「おはよう、衣都」
眠気に抗い重たい瞼を開けると、響はジャケットを羽織り、既に身支度を整え終えていた。
「起こしてしまったかい?」
「いえ。大丈夫です……」
目を擦りながらベッドから起き上がろうとすると、響は衣都を労わるように優しく頭を撫でてくれた。
「今日は休みだろう?もう少し寝ていてもいいんだよ」
昨夜も夜遅くまで、例のファイルと向き合っていた衣都は確かに寝不足だった。
これから副都心エリアにある自社ビルへ出勤する響とは異なり、水曜日のこの日は衣都にとっては休みである。
響は四季杜が支配する陸・海・空の物流の内、海を任されており、若くして『四季杜海運』という海運会社の副社長を務めている。
響が一生懸命働いているというのに、自分だけ二度寝を貪るわけにはいかない。