アリス人形
だが、すぐに立ち止まる羽目になった。

――ヒュオオォ…

再び風が頬を擦り、亜里珠の目には涙が浮かぶ。

「……やばい。泣きそう。」

それも無理はない。たった1歩進んだだけにもかかわらず、清々しい森が急に薄暗い森へと変貌してしまったのだから。

背後に目をやるが、先程までいた場所とは明らかに違った。

試しに恐る恐る戻る。

景色は変わらない。

「うぅ…何故!」

「うぅん…。何故と言われてもねぇ。」

「だよねぇ〜…って、ぬあぁ!?」

嘆き歩く先には、赤い首輪をした猫が、まるで絵本で見る猿のように器用に尻尾を木の枝に巻き付けてぶら下がっていた。
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