アリス人形
景色がまた変わるのではないかという不安を抱えつつも、亜里珠は歌を頼りに森の奥へと進んでいった。

やがて、歌詞がはっきりと聞き取れる場所までたどり着いた。

「「はーじまるはーじまる お茶会へようこそ!さーあ祝おーう 何でもない日おめでとう♪」」

(変な歌だなぁ…。あれ、チェシャ猫?)

2つの人影が見えた頃、亜里珠はやっとチェシャ猫がいないことに気付いた。しかし、なぜかそれが当り前のように感じた。

人影は、シルクハットをかぶった少年と、茶色いウサギの耳が生えている男性だということが分かった。

「あのー…、」

声をかけると、突如シルクハットの少年に頭を叩かれた。

「あいたっ!」

「アリス!遅かったじゃないか!!君が突然消えてから490560時間ずっっっと待ってたんだぞ!!!!…って、あぁ?」

少年は亜里珠と同年くらい。星の輝きを持った瞳が不審そうに亜里珠を見据えていた。

「ストップ、帽子屋。ソーリー…驚かせてしまったね、アリス。」

そして、背の高い男性が間に入ってきた。見上げると、頭には長く茶色い耳が空に向かって生えていた。

「シロ…ウサギ?」

雰囲気といい、口調といい、明らかに違かったが、亜里珠は自然とそう口にしていた。
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